初期アブー・ハニーファ美徳伝の編纂期における言い伝えの選別基準について(<特集>宗教と倫理)
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概要
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スンナ派正統四法学派の一つハナフィー派の学祖アブー・ハニーファは、その方法論上の問題、とくにハディース(預言者伝承)を軽視したとみなされたことから、伝承家による攻撃にさらされた。ハナフィー派は、この攻撃に対抗し、また啓示に基づくイスラーム法の学派としての正統性を主張する目的から、アブー・ハニーファの美徳や偉業を伝える「美徳伝」を九世紀末ないし十世紀初頭から編纂し始めた。本稿では、代表的な美徳伝の一つであるマッキー『美徳伝』の内容をごく大まかに紹介するとともに、初期の美徳伝の編纂過程を、もっぱら伝達履歴の分析を通じて推測した。その結果、美徳伝の編纂が始まった第四ととくに五世代の伝達者に至って、ハディース学の原則に従って、意識的に伝達者の資質(信頼度)を基準として言い伝えの取捨選択を行い始めたという結論を得た。
- 2009-09-30