道具的回避条件づけ研究における諸問題(第五十集記念号)
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概要
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回避学習研究における次の4つの問題が検討された。(1)積極的回避と消極的回避-従来の道具的回避反応の形成過程(回避訓練)と,ある動因により維持されている反応の罰による抑制過程(罰訓練)との間の類似性が示された.即ち,共に嫌悪的事態であり,従って共に恐怖条件づけとこの恐怖の除去・統制を結果する行動様式の形成がある。同時に,両事態に含まれる刺激・反応などの相違を図示した。(2)自律性反応と骨格筋性運動反応-以下の3点について述べられている.(a)回避条件づけ事態での「あらわな反応」を,恐怖強度の指標にしたり自律性反応と密接に対応(1:1的関係)させたりする考えは,かならずしも妥当ではない.(b)自律性反応はパブロフ的に条件づけられ,骨格筋性反応はオペラン的なものによるとする従来の考えに対して,GSRのオペラント条件づけ形成の成功例をあげた.(c)回避行動に関するMowrer等の二要因説は,Smithの運動媒介説と矛盾することから,骨格筋運動系の麻痺下で古典的に条件づけられた反応が,麻痺回復後の行動に影響(転移)を与えるという最近の実験を紹介し,学習の中枢的出来事の重要性を認めた.(3)報酬からのタイム・アウトの回避行動-正補強の撤回やTOが嫌悪的特性を有するのかの問題を,電気ショックを使用する事態での行動と比較しながら述べ,この考察の重要性と負補強からのTOについての研究の必要性とが結論づけられた.(4)条件刺激の特性-嫌悪事態に先行する本来中性的な刺激性質が,嫌悪的なものか弁別的なものかについて論じ,二つの予備的実験からその問題点と将来の方向づけを行った。
- 慶應義塾大学の論文