ニトロフラン誘導体Potassium-1-methyl-1, 4-dihydro-7-〔2-(5-nitro-2-furyl)-vinyl〕-4-oxo-1, 8-naphthyridine-3-carboxylateの経口投与によるICRマウスにおける腫瘍の発生
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概要
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抗菌性を有するニトロフラン誘導体Potassium-l-methyl-1, 4-dihydro-7-〔2-(5-nitro-2-furyl)-vinyl〕-4-oxo-1, 8-naphthyridine-3-carboxylate (NFN)の経口投与によるICRマウスにおける腫瘍の発生について検討した。生後6週令のICR-JCLマウスの雄雌各々30匹をNFN添加飼料で飼育した。投与期間は初め0.02%添加飼料で8週間,その後5週間はNFNの投与を中止し,ついで,添加量を0.01%に半減した飼料で7週間投与したのち, NFN無添加飼料で飼育し総計36週飼育した。また同時に雄雌合計36匹のマウスを対照動物として同じ期間飼育した。この間薬剤投与総量は雄,平均116mg,雌,平均125mgであった。その結果,実験群のマウスは8週から15週までの間に毒性のため雄は20匹,雌は18匹死亡した。剖検の結果,胃の出血が主なる死因で全例,腺胃粘膜の強いびらんおよび潰瘍の形成を認めた。しかし腫瘍は認められなかった。15週以上36週まで生存した22匹のマウスについて発癌性の検索が行なわれた。前胃には全例乳頭腫様増殖,乳頭腫が見られ, 22例中6例に扁平上皮癌が認められた。肺にはほぼ全例(18/19)に多発性の腺腫が認められ,なかには悪性化の傾向をもつものも見られた。胸腺腫大,脾腫,リンパ節腫大を伴なうリンパ球性白血病が22例中2例に認められ,胸腺の腫大はないが脾腫,リンパ節腫大のあるものが22例中4例見られた。そのほか皮下の線維腫1例,子宮筋肉腫1例を認めた。対照群の36匹のマウスでは死亡例なく,剖検の結果雄18例には異常所見なく,雌18例中1例に胸腺腫大,脾腫の見られたもの,また1例に肺の腺腫を,それぞれ認めたのみであった。これらの所見からNFNはICR-JCLマウスにおいて高率に腫瘍の発生を促がす活性を示し,その主なtarget cellは前胃の扁平上皮細胞,肺胞上皮細胞およびリンパ球であった。