胃癌経過の回顧的検索
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概要
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胃癌の局所での形態変化,進展速度等動的な生物学的特長を知るために,臨床検査資料について回顧的検索を行なった。そのため,72例の胃切除または剖検胃癌患者について,少なくとも6ヵ月以上前のX線および内視鏡フィルムを32施設より蒐集した。内訳は早期癌32例,うち隆起を主としたもの7例,陥凹を主としたもの25例で,進行癌は40例であった。この方法により総数延537回分の検査資料が得られ,その観察期間は最長114ヵ月前より7ヶ月前までにおよんでいる。症例の分布は,早期癌,進行癌を通じておよそ諸家の統計資料と類似し,特別な片寄りはない。良好な資料の得られた例については,早期癌,進行癌のいずれについても年余にわたって病巣の存在が確認されたものが多く,その増大の程度は進展後期ほど激しい傾向がみられる。陥凹性早期癌では病巣内に潰瘍が出没する例もみられ,該病巣内には良性潰瘍と同じものが起こっていると思われた。進行癌では少なくとも潰瘍の縮小する傾向はみられず,この潰瘍は早期癌の病巣内に起こるものとは別のものなのである。また,正常粘膜面と思われた部分から癌の発生した例はみない。以上の成績から,胃癌の局所発育は従来考えられていたよりもはるかに遅いことがわかった。さらに,胃癌見逃しのおもな理由は検査の量的不足であって,造影法の質の悪さと読影の不備がこれに続いている。
- 千葉大学の論文