肝疾患における血清免疫グロブリン濃度の臨床的意義について
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概要
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各種肝疾患について血清免疫グロブリン濃度を測定し,同時に肝機能検査,肝生検を行ない,対比して免疫グロプリンの臨床的意義について検討した。急性肝炎では統計的に処理すると正常人と有意差はIgG,IgA,IgMいずれでも認められない。経過をみると発症2〜3ヵ月後なお肝機能異常を示す例ではIgGが増加する。IgMでは病初より高値を持続する例と,正常値のまま経過する例の2群にわけられる。急性黄色肝萎縮ではいずれも増加するがとくにIgMの増加が著明であった。慢性肝炎ではIgGが明らかに高かった。肝硬変ではIgG,IgA,IgMいずれも増加するが,末期では急速に著しい増加を示した。パンチ症候群ではIgMのみ高く,閉塞性黄疸では多くは変化が認められなかった。Dubin-Johnson症候群ではIgGおよびIgAはむしろ低くIgM正常であった。組織所見では,急性肝炎でIgM高値持続する例は胆汁うっ滞型を示していた。慢性肝炎でIgGは活動型で明らかに増加しているが,非活動型では正常人と有意の差を認めなかった。非特異反応性肝炎および脂肪肝ではIgG,IgA,IgMいずれも正常であった。各種肝機能検査値と血清免疫グロプリン値とは明らかな相関を示さなかった。以上から1)急性期にIgM著高を示す例は激症肝炎を推定させる。2)急性および慢性肝炎でIgG高値のものは持続性活動性変化を示す。3)肝硬変で経過にしたがいIgG,IgA,IgMが上昇する場合は予後不良の可能性がある。4)非特異性反応性肝炎,脂肪肝,パンチ症候群などの鑑別診断上の肋けとなる。など肝疾患の診断上,血清免疫グロブリン値は有意義である。
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