大腸の基本的X線像に関する研究 : 主として二重造影像について
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概要
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最近の胃X線診断学の進歩にくらべ,大腸X線診断学は格段の遅れがある。そのレベルを高めるためには,大腸粘膜表面の性状を詳細にX線像にうつし出すことを目ざすとともに,検査が短時間でしかも手数を要しないですむ方法を確立する必要があると考え研究を行なってつぎの結果を得た。1)切除腸の観察によって,正常大腸粘膜表面には腸管径にほぼ平行して走る無数の微細な「溝」とそれによって囲まれているやや細長い,大きさ平均1×3mmの「小区」があり,微細網目状構造とならっている。病変部分ではこの構造の消失か配列の乱れがあり,組織学的な病変浸潤範囲とほぼ一致していた。2)切除腸によるX線学的検索によって,粘膜表面の微細網目状構造を網目像としてX線像に再現し得,これが再現し得る最小単位であり大腸二重造影像の基本像であることを認めた。3)臨床例においても,洗腸を要しない前処置法,造影剤,二重造影法を検討し,網目像を現わし得た。筆者の二重造影法での網目像の現出率は71%で,従来の方法にくらべよい成績であった。4)洗腸を要しない前処置法を含めて検査法が簡易であり,平均所用検査時間が20分で,手数および時間を要せずかつ副作用は認められなかった。5)網目像が大腸二重造影法の基本的X線像であり,新しい診新基準であることを実証し得た。病変部分では細目像の消失または配列の乱れがあり,X線像におけるその範囲と,組織学的に検索した病変およびその浸潤範囲とほぼ一致した。6)筆者の二重造影法の診断能については,隆起性病変では大きさ2mmのポリープを,陥凹性病変では大きさ2mmの小潰瘍を診断し得た。これによって微細病変の診断が可能であり,また癌浸潤の範囲の決定や,あるいは潰瘍性大腸炎の初期像の解明や診断に大きな役割を果たし得るものと考える。