糸球体腎炎諸型の組織病理学的研究,全身病理の観点より
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概要
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一種の免疫病と考えられる糸球体腎炎における糸球体病変の解析は,従来より詳細になされているが,その背景となる抗体産生臓器の応答ないし反応と相関連せしめての研究は少ない。著者は,びまん性糸球体腎炎の剖検例91例(1958〜1970年)についてこの観点より組織病理学的研究を行なった。その結果,1)糸球体に増生性変化を主とする急性,亜急性症例.12例,13%。2)糸球体に硬化性変化および増生性変質性変化の著明な慢性再発生の症例.76例,84%。3)糸球体に変質性変化を主とする慢性遷延性の経過を示した症例.3例,3%という3群に大別できた。第1群では抗体産生臓器の過形成,諸臓器における小動脈壊死に続く肉芽腫形成が認められ,第2群および第3群では抗体産生臓器は萎縮ないし線維化を示し,諸臓器小動脈壁への類線維素の沈着を認めた。前者は実験的血清病にみられる急性,亜急性の病変に,後者は遷延感作末期の病変に類似性を求めることができる。このことは人の腎炎においても,糸球体における増生性変化から変質性変化に至る過程の背後にdysimmunizationの存在を強く示唆しているといえよう。
- 千葉大学の論文