膵癌の病理組織学的研究,特に癌組織像と転移に関する知見に就て
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概要
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膵癌剖検例27例につき,その原発巣の病理組織学的所見(ことに浸潤度INF,基質量および小静脈の変化)と,癌の悪性度の指標としての転移(ことに血行性肝転移)との関連につき検討した。1)原発巣にて,INFα(1例)では転移を認めなかった。INFβ(12例)では,血行性転移として,肝転移を認めないものが5例,軽度のものが5例で中等度のものは2例にのみ認められ,リンパ節転移は局所リンパ節でとどまるものを6例に認めた。INFγ(14例)では12例に中等度ないし高度の肝転移を認め,リンパ節転移は全例に,かつ広汎に認められた。2)原発巣が線維性基質に富む例は肝転移を認めないか軽度で,一方基質に乏しい例では,中等度ないし高度の肝転移を認めた。この傾向は同一浸潤度の症例間においても成り立った。3)膵内癌浸潤部の小静脈はさまざまな崩壊像を示すが,肝転移を認めない例ならびに軽度の例では,原発巣の癌浸潤部において小静脈の圧排像,小静脈壁の線維性肥厚が認められ,静脈内腔が閉塞しているものが多く観察された。一方肝転移の高度の例では小静脈壁は癌浸潤により破壊され,癌細胞の血流内侵入像や,小静脈内を管内性に増殖していく像が認められた。4)以上一連の小静脈の変化は癌細胞の浸潤形態と,それに伴なう基質の反応によって生ずるものと示唆される。なおこの変化が血行性転移と密接な関係があることから,原発巣の小静脈の変化は血行性転移源としての癌の組織学的悪性度を判断する上に,非常に参考となる所見と考えられる。
- 千葉大学の論文