「らい」の実態に関するケース・スタディ
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概要
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長島愛生園入園者1412名中,近親にらい患者を有する者533名(37.7%)が存在する。これを基礎に近親者中のらい患者実数,秘匿されていた近親者の実態と家族内感染の実態について,面接による追跡方法で集計した。このうち,近親患者1名という対象は286名で(72%)あるが,対象「U・M」のような確認近親者50名中13名の発病,対象「T・A」のような8名の同胞中5名の発病,対象「W・N」のような57名中11名の発病など濃厚な家族内の感染発病もみられる。さらに,一般人の"らい"に対する意識調査を,全国の8地区から無作意抽出により,2727名をえらび質問を行なった。らいという言葉の認識,伝染性疾愚としての認識,いかなる印象を持っているか,また社会復帰,関心の度合などの項目について質問した。"らい"については98%の人が知っており,84%が伝染を認めている。らいへの恐怖感が約50%のものにあり,また不快嫌悪感は18%のものにあり,らいは恐ろしい病気であるという感覚を持っている。らいに対する意識消失は医学の進歩によるよりも,むしろ強制隔離によりなされたといっても過言ではない。今後,積極的な医学的研究が望まれる。
- 千葉大学の論文