成人の紅皮症 : 52例の症候学的分析
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概要
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著者は昭和34年より昭和42年に至る9年間に千葉大学医学部附属病院皮膚科において加療した紅皮症患者52例を症候学的にI型(リンパ腫性紅皮症,紅皮症様皮膚疾患を含むHerzbergの分類中浮腫小水庖型と先天型とを除く全病型)とII型(浮腫小水萢型)とに分けて分析し,次の結果を得た。1)紅皮症の発生頻度は皮膚科全患者の0.12%,同入院患者の3.59%を占めたが,年次的消長は認められなかった。2)性別頻度は顕著な男子優先(♂:♀=3.7:1)を示し,それはI型において特に著しく,女子例はII型に属する症例が多かった。年令的には平均60.4才で50〜80才に頻発するが,I型の平均年令は66.3才,II型のそれは49.2才であった。3)発病の季節的頻度をみると,I型は春と秋とに多発し,II型は春より夏にかけて頻度が高い。4)既存の掻痒性皮疹の汎発化にはI型では1月以上を要することが大部分であり,治療過誤が紅皮症の成立を助長すると考えられる。5)鱗屑は病型に特異的なものでなく,慢性経過により微細化する。著者はI型の多くの皮疹は元来粒糠様の鱗屑をつけるが,大葉状になる時は医原性急性化を考慮すべきものと信ずる。6)臨床検査成績は従来の諸家の記載とほぼ一致するが,著者の症例では肝機能検査のBSP 排泄障害の頻度が注目され,低Na,低Kおよび高Cl血症がしばしば存した。7)陰性マントー反応は時に証明されるが,それは原因不明例ではリンパ腫の非特異疹と相関した免疫不全による可能性がある。8)予後の明らかな38例では1型24例中6例がおそらくほかの原因で,またII型14例中7例はおそらく紅皮症で死亡した。全死亡率は34.2%であった。