脳腫瘍患者の両側同期性単一律動性δ波の臨床的意義について(<特集>脳と神経の研究VI)
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概要
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両側同期性単一律動性δ波は諸家によって前頭葉,視床,中脳網様体,天幕下腫瘍との関連の深い伝達性の遠隔波であると述べられているが,発現機序や臨床的意義などその本態は依然として不明のままである。その解明の糸口として,脳腫瘍患者における本波形の出現,非出現群における臨床経過,脳圧完進,腫瘍の局在性,尿素溶解液の点滴静注による脳圧下降と本波形の変化に検討を加えて本波形の臨床的意義の探索をこころみた。すなわち本波形は神経膠腫など急速に発育する破壊的腫瘍に出現し易く,大脳深部の腫瘍も本波形を出現させ易いが,前頭葉や天幕下腫瘍に特に多いということはない。また本波形は脳圧完進との関係は深いが,尿素溶解液の点滴静注による髄液圧曲線との関係をみると,単純な相関はみられず,本波形は脳圧尤進による二次的変化により関係が深いと思われる。また本波形は臨床経過のある時期,すなわち腫瘍が直接,間接に脳幹を侵し,意識障害などの症状の出現する時期にみられることが多い。また剖検所見も脳幹の侵襲を裏付けている。すなわち脳腫瘍患者における本波形の出現は腫瘍の侵襲が一次的にまたは二次的に脳幹におよんでいることを示す兆候であることをものがたっている。
- 千葉大学の論文