燐酸酵素による転移反応 : II. 燐酸Diesteraseによるエステル燐酸転移
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概要
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Phbsphomonoesteraseにより燐酸がP-Nitrophenol-燐酸(NPP)から,アルコール性OH基に転移しうること,及びその反応の機序を前報で報告した。その際この反応にDiesteraseが関与しない事を明らかにした。しかし,このようにMonoesterから燐酸が,酵素的にOH化合物に転移することが可能ならば,DiesterからMonoesterがOH合物に転移する反応(エステル燐酸転移)も酵素的に行われ得べきである。Monoesteraseを含まないDiesteraseによる燐酸Diesterの水解は〔I〕の如く経過し,共存するOH化合物へのモノエステル転移が行われるときには〔II〕の反応がこれに並発する。[chemical formula]…〔I〕 [chemical formula]…〔II〕このエステル燐酸転移を証明するには,遊離R'-OHを定量するを要するから,供与質としてNP化合物を供試することが望ましいが,Di-P-Nitrophenol-燐酸はDiesteraseにより水解され易いが,エステル燐酸転移で生じたる新Diesterから,またDiesteraseによりてNPが遊離すべき故に,この新生Diester量を測定し難くなる。なおこのエステル燐酸転移反応が行われたることの判定は,反応液中のDiesteraseを加熱不活性化したる後に,Monoesteraseを作用せしめて生成NP量と無機燐酸量とを比較することによりて可能である。かしDiesterase作用で生じたるNPPと共存OH化合物との間に,Monoesterase作用による燐酸転移が行われうるから実験的にはエステル燐酸転移が先行したかを明らかにし得ない。故にこの実験にはP-Nitrophenol-燐酸-エチルエステルを供試することが妥当である。この化合物からDiesteraseは速やかにNPを遊離する。
- 千葉大学の論文
- 1953-05-28