利根川下流地方に於ける肝吸虫症の疫学的研究
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概要
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千葉県下利根川沿辺は古くより知られた吸虫類蔓延の地であるが,殊に地区住民に重大なる脅威を与えたのは大正の末年に於ける日本住血吸虫の勃発的流行であつた。之に関しては,福谷,柏戸氏らの貴重な研究がなされたが,他の吸虫に就ては比較的関心が薄く,従つてその方面の精査研究は行われなかつた。然るに年移り昭和25年度に至つて千葉県衛生部が当衛生学教室並に予防術生研究所の応援の下に同地区住民第1回検便を施した処,日本住血吸虫卵は殆ど検出されず却て肝吸虫卵の高度な検出となり早急にその対策が望まれるに至つた。畢竟すれば過往の業績は限局された場に於ける個々関聯のない主題の追究に止り,予防医学の立場に在つて大局的な見透しを行つたもののない事を露呈したといえよう。当時県衛生研究所にあつてこの検索に従事した著者は谷川教授御指導のもとに此盲点となつて居る問題を追究した。即ち利根沿辺産の吸虫類を系統的に調査し,殊に重要なる2-3吸虫に就ては種々なる実験的研究を行い,以て地区佳民の保健に貢献せんとしたのである。因に本篇は紙数の関係から自著"利根沿辺産吸虫類に関する研究"の第1篇"肝吸虫症の蔓延状況に就て"第2篇"肝吸虫症の疫学"及び第3篇"淡水-半鹹水産魚類中吸虫類被襄幼虫に就て"を要約したものである。
- 千葉大学の論文
- 1953-05-28