Jude the Obscure: 悲劇の原因
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概要
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結果的にはThomas Harby の最後の小説となってしまったJude the Obscure は数々の非難や中傷、悪意のある激しい攻撃にさらされた。その原因は、「人間の最も強い情熱」即ち「性」の問題を正面から取り上げ、また当時のヴィクトリア朝社会の制度や因襲を痛烈に批判したからである。 本作品の主筋は、主人公Jude が学問を志し、大学へ進学して、牧師になることを夢見ながら努力したが、社会の厚い壁に阻まれて挫折し、失意の内に死んでいくという悲劇である。熱心に勉強しているJude を脇道に逸らすのは肉への欲望であり、結婚などにまつわる社会習慣や因襲や制度である。勉強に没頭して、実社会と接触することが少なかったJude が、Arabella との誤った結婚により社会の因襲と関わり合いを持つことになる。社会の因襲に捕らわれると、蟻地獄に落ちたように抜け出ることは至難の業である。 彼にとって性の欲望に打ち勝つことも極めて困難なことであった。彼は、肉体と現実の生活を体現するArabella と精神性や知性が先に立ち実生活とかけ離れた言動が目立つSue との間で、性的欲望と知的憧れに振り回されながら揺れ動き、自己の確立も出来ずに、不安定な生活を続ける。2 人の女性を通じて、社会の制度や因襲と闘うが、社会から遊離して行くばかりである。大学に拒否され、学問の夢を捨てる。最後に家庭崩壊を招き、愛するSue に捨てられ、Arabella にも見限られて、死に到る。 Hardy は本作品でJude とSue を通して、社会制度や因襲が矛盾に満ちており、非人間的で不公平であると告発し、批判している。主人公たちは、性の問題に苦しみ、社会制度や因襲に反逆し、敗北を喫し、報復を受けて、幸せを阻まれ、不幸になって行く。本稿では主人公の悲劇はどのように起こり、その原因は何処にあるのかを明らかにすることを試みる。
- 2009-03-15
著者
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