副鼻竇炎に於ける分泌物の乾酪性變化の成立に就きて併症例報告
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
抑も乾酪性鼻炎たるや副鼻腔蓄膿症の一轉歸なり。然るに之れが記載を文献史上に求め或は教科書に渉漁するに、寔に寥々として晨星の如く而かも其記載實に短にして凡て皆一頁の記述をも之れを惜むに似たるは何ぞや。其症例稀有なるが爲めに之れを詳にする暇なきか或は叉事あまりに卑近に屬して論ずるに足らざるを以ての故なる乎。我國に於ては往年三井病院より其一症例を報告して比較的詳細に之れが臨床上の所見を公にせられたるも未だ組織的檢査に及ばず、吾人をして徐ろに隔靴掻痒の憾なきを得ざらしめたり。頃者ウッフェノルド(in Gottingen.)が副鼻腔粘膜に於ける各種炎症の状況を精査したる論文中偶々之れに論及せるものあるを見るも尚吾人の渇を癒するに足らざるを憾みとす。時に恰も當臨床に於て其最も著明なる一症例に遭遇し之れを觀察するの横會を得、而かも該患者たる啻に其乾酪性鼻炎たるを以てのみならず、臨床上幾多専門醫家をして悪性腫瘍と誤診せしめたる點に於て一層吾人をして興味を深刻ならしめたれば茲に之れを報告せむとす。
- 京都府立医科大学の論文
- 1917-12-31