オオサンショウウオの季節的な移動 : 流水に棲む両生類による繁殖移動の可能性
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概要
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移動性の両生類(大部分のカエル類と、トラフサンショウウオ科・サンショウウオ科・イモリ科のサンショウウオ類)が繁殖のため陸上から水中に移動するように、流水域に棲息する両生類が流水域内で繁殖移動を行うかどうかは知られていない。そこで本研究は、流水に棲む両生類オオサンショウウオの繁殖移動の可能性を、個体群の季節的な移動特性と、移動に影響を与える要因の解析によって明らかにすることを目的とした。兵庫県篠山市の羽束川で標識再捕獲法により本種を200個体識別し、1年以上の調査を行った。一般化加法モデルによる解析から、4変数(時期・再捕間隔・放逐地点・全長)のうち、時期だけが移動距離に影響していることがわかった。季節的な移動特性を、繁殖期の前・後および非繁殖期で比較すると、本種は平均して繁殖期前に約200m遡上し、繁殖期後に約200m降下することが分かった。それらは、多数の短距離移動と少数の長距離移動で構成され、最長移動距離は3,969mの遡上であった。繁殖期前の遡上は、8月下旬から9月上旬の産卵に関係していることが示唆された。又、冬季から春季にあたる非繁殖期では、本種はほとんど同じ所に留まっていた。以上から、本研究で示した季節的な移動は、流水に棲む両生類オオサンショウウオの繁殖移動を示唆するものと考えられる。
- 2009-07-31
著者
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田口 勇輝
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科
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田口 勇輝
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科:(現)京都大学大学院地球環境学舎:(現)兵庫県立人と自然の博物館
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田口 勇輝
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科:(現)京都大学大学院地球環境学舍:兵庫県立人と自然の博物館