企業資本における社会関係資本の市場評価に関する実証研究 : 企業不祥事を中心に
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概要
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本研究は、「信頼」や「つながり」といった社会における関係性に注目をあてた社会関係資本(Social Capital)の先行研究を踏まえ、企業資本の中に社会関係資本を織り込んで市場が評価していることを考察している。その上で、企業不祥事におけるクライシス・マネジメントおよび経営層への危機管理教育への示唆を得ることが目的である。先行研究により、企業資本における社会関係資本の評価について考察するためのフレームワークを提示され、市場参加者が収集する社会関係資本を意図する情報は、経営者や組織の行動情報であり、市場はその経営行動による情報を評価していると提示した。実際に1992年から2007年までの15年間に新聞掲載され、データ取得が可能な70件の企業不祥事をサンプルに、株式市場の反応についてイベントスタディ法による実証研究を行った。実証結果からは、規範逸脱行動に起因する行動情報に問題のある規範逸脱型不祥事は、有意に株価に負の影響を与えることが実証された。社会関係資本の毀損が、企業価値に多大な負の影響を与えたのである。また、同じ不祥事でも、対策不備型の不祥事については、イベント自体の直接的な負の影響はほとんどなく、不祥事発覚後の謝罪、原因究明、再発防止策などの対応を適切に行うことによって、むしろ市場からプラスに評価される可能性があるという実証結果を得た。しかし、松下電器のケースで確認したように、不祥事の対応における規範逸脱型か対策不備型か判断は紙一重である。経営者には、常に社会(消費者)の規範許容度(常識)を認識・理解することが求められており、危機管理における経営者教育に示唆を与えている。
- 2009-06-26