性機能障害の臨床から日本女性のセクシュアリティを考える(第49回日本母性衛生学会学術集会シンポジウム〔2〕より,日本人の性)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本女性のセクシュアリティ,特に性行為の質について考察するため,性機能障害をキーワードとして検討する。米国のLaumannの調査では,性機能障害がある女性は43%で男性の31%より多い。障害の項目別にみても有意に女性に多いことがわかる。ヨーロッパやアジア諸国の報告も同様の傾向である。日本人の性機能障害調査は少ないが,NHKの調査(1999)では,オルガズムが必ずある男性が70%であるのに対し,女性は36%である。中高年男女の性調査(荒木ら,2000)では,オルガズム障害のある男女はそれぞれ9%,32%であった。欧米の調査と比べても,日本では男女の差がより際立っている。また,日本女性では他の性機能障害に比べて,性交痛が多いという特徴がある。一方,日本における女性性機能障害(female sexual dysfunction:FSD)の受診状況をみると,筆者の性治療外来受診者の圧倒的多数(71%)が,発生頻度は比較的まれな腟けいれん(vaginismus)であり,より一般的にみられる***障害,性的興奮障害,オルガズム障害はごく少数である。vaginismusの受診が多いのは日本の特徴といえるが,その大きな理由は,性治療機関が少なく重症者にしか対応できない状況がある。性交が不可となるvaginismusは,不妊の問題もかかえるところから,当事者の不全感は強く,ネット情報その他の伝手を頼って受診するのである。FSD患者の心因を検討すると,一般女性とも共通する問題と,患者固有の問題とがみられる。vaginismusでは初交時の痛みや,「そのとき処女膜が破れ出血する」というイメージへの恐怖が,性交体験を拒絶する共通因子となっている。これは多くの女性が共有し,越えなければならない課題としている「誤解」である。そのほか,性行為についての認識が多様化し,刷り込まれた保守的な価値観と知識との葛藤が心因となる性機能障害もある。これら多くの女性に共通する問題を取り除けば,FSDの多くを予防でき,女性の性の健康は向上すると考えられる。
著者
関連論文
- 性機能障害の臨床から日本女性のセクシュアリティを考える(第49回日本母性衛生学会学術集会シンポジウム〔2〕より,日本人の性)
- O-014 妊娠中絶を繰り返さないための取り組み : 若年妊娠に焦点をあてて(Group3 避妊・家族計画,一般口演,第51回日本母性衛生学会総会)
- 思春期と性の健康 (特集 今,改めて"思春期"を考える--その問題点と対策)
- 性交痛 (特集 女性の疼痛とその対策)
- 中高年女性の性機能障害とホルモン補充療法 (特集 今,改めてホルモン補充療法を考える)
- 女性のセクシュアリアティ : 婦人科診療、特に性治療から見えてくるもの(日本人の性,第49回日本母性衛生学会総会)
- 思春期の性の健康
- 女性性機能質問票日本語版(SFQ-J)の計量心理学的評価
- 178 妊婦に向けてのDVスクリーニング : 助産師の意識に焦点をあてて(Group29 虐待・ドメスティックバイオレンス1,一般演題ポスター,第48回日本母性衛生学会総会)
- 女性の性機能障害 sex therapist の立場から
- 女性性機能障害に関する調査票の日本語版作成における言語的妥当性の検討
- 心因性外陰痛の女性の一例
- 司会のことば(シンポジウム/性障害のcomprehensive approach : 医学的,心理学的,社会文化的立場から)(第44回日本心身医学会総会)
- 医療者のストレス・マネージメント
- 若年層の性生活と老後のライフスタイル 日本人における性生活--人生80年を健やかに生きる (特集 現代の更年期) -- (現代の新たな問題--早発更年期障害と若年層の擬似症状)
- 女性の性機能 (特集 ラブ・サイエンス)
- 女性の性反応と性機能障害研究の歴史と現在
- 性の健康を推進するために「性の権利」「ジェンダーの平等」への理解を深める
- 女性性機能質問票日本語版(SFQ-J)の計量心理学的評価
- 女性のセクシュアリティ--婦人科診療より (特集 セクシュアリティとこころ)
- 女性における性機能障害の現状 (特集 性機能障害治療マニュアル)
- 女性性機能障害に関する調査票の日本語版作成における言語的妥当性の検討
- 〔3〕女性の性機能・性機能障害 : 研究史と現状(教育講演,第52回日本母性衛生学会総会)
- 中高年女性の性機能障害 (第26回女性医学学会学術集会) -- (教育講演)
- O1-158 妊娠中絶をくり返さないための取り組み(2) : 中期中絶に焦点をあてて(避妊・家族計画,一般口演)