アイデンティティ・ポリティクスとしてのツーリズム : 中国東北部における韓国のパッケージ・ツアーの事例から
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概要
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本稿が扱うテーマは韓国人旅行者による白頭山を中心とした中国東北部への旅である。巡礼指向のゲストにとって、そこはナショナル・アイデンティティを投影すべき民族聖地となる。II章では、まず「異人性」を前提とした従来の観光研究に対し「同胞性」を軸にすえる本研究の立場を示し、次に「同胞性」認識の根源として檀君神話を再帰的近代化の観点から捉えることでツーリズムの構築過程を明らかにした。そしてグローバル化によるポスト伝統的秩序では、ホストとゲストとのアイデンティティ・ポリティクスの相克性を配慮する必要があることを指摘した。III章では韓国のパッケージ・ツアーでの参与観察の事例を記し、旅程や朝鮮族ガイドの語りに伏在するコンテクストが外貨獲得に回収される仕掛けや、ガイドたちが一人称の使い分けによるアイデンティティ管理を通じて最大限の利潤を引き出し、オリエンタリズム構造下でのゲストとの関係性を逆転させてゆく過程を描いた。結果、アイデンティティ・ポリティクスとしてのツーリズムで問われる「真正性」とは、むしろ観光者の方が議論の主体となる場合もあること、ゲストとホストがその主導確をかけて動態的相克を演じる場合もあること、ホスト国の伝統文化の真正性を認めたくないゲストの側が無視・無関心という印象操作を行なう場合もあることが見出された。
- 2009-06-30
著者
関連論文
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- 金明美著, 『サッカーからみる日韓のナショナリティとローカリティ』, 東京, 御茶の水書房, 2009年, 392頁, 7,800円(+税)
- 報告5 中国観光に投影されたナショナル・アイデンティティ : 「民族聖地」をめぐるアイデンティティ・ゲームに注目して(ツーリズム・聖地・巡礼,テーマセッション3,2007年度学術大会・テーマセッション記録)