ポストコロニアル・インドにおける「伝統」の変革 : 現代のサティー論争におけるアシス・ナンディと批判的伝統主義
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概要
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一九八七年インド北西部で一人の女性が夫の死に伴い、その遺体と共に荼毘に付された。サティーと呼ばれるこの慣行をめぐり、同年デモ活動は頻発し、知識人が意見を戦わせた。「現代のサティ論争」でアシス・ナンディは、サティーの禁止には賛成したが、焚死した女性への寺院建立なども規制の対象としたサティー禁止法に反対した。サティーを行った女性への尊敬心・信仰心まで非難されるべきでないと、彼は主張したのだ。この発言で「サティー擁護者」とみなされた彼の真意を汲み取るためには、彼の提唱する「批判的伝統主義」を理解する必要があった。このスタンスとは、現代インド社会の植民地主義及び西洋近代の影響を脱構築し、よりよい社会構築を求める。そして批判的伝統主義者は、サティーに批判的に取り組み、ポストコロニアルな状況下における「伝統文化」の多様な変革を追及する。しかし当時の論考で彼の企て全てが成功したわけではない。本稿では、論争における批判的伝統主義を精査し、その有効性と課題を論じている。
- 2009-06-30