民俗儀礼と日常的身体経験 : 岩手県岳神楽を事例として
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概要
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本稿は、岩手県に伝承される岳神楽を事例として、日常的身体経験への視点から民俗儀礼の表象について検討する試みである。「山の神が食べ物を人々に振りまく」という表現は、従来、観念や精神の表現と考えられてきた。しかし、認知意味論に基づいてその表現を検討してみると、日常的身体経験の反復によって形成された「イメージ・スキーマ」を基盤にして成り立つものと考えられる。岳神楽の地域における人々の身体経験にとって、供給者である自然現象は本来不可解な意志的存在だが、祈りや儀礼のなかでそれは「カミ」と表現され、理解可能なパターンへと変換されている。逆にカミを知る認知システムは、自然からの供給の日常的身体経験と、儀礼の身体経験によって再活性化される。こうして自然から供給される身体経験は、「喜び」「ありがたさ」「親しみ」といった感情と連合しながら、「カミの恵み」として理解される。
- 2009-06-30