日本の看護研究における共感概念についての検討
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概要
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本論は日本の看護研究において共感概念がどのように捉えられているのかを明らかにした上で,その結果をもとに日本の看護学における共感概念について考察することを目的とする.研究方法は文献検討による記述的研究である.医学中央雑誌Web版にて1983〜2006年に公表された看護系論文のうち,キーワードに「共感」「共感性」「共感概念」「患者-看護師関係」が含まれる原著論文を抽出し,共感の概念自体を研究したもの,および患者-看護師関係における共感性について研究した論文のうち共感の概念自体に言及している論文15件を選択し,当該文献を精読し,それぞれの文献について「共感概念」に関する記述を抽出した.また文献を研究方法から分類し,その分類内での共感概念の特徴について分析を行った.そこから得られた結果をもとに,日本の看護研究における共感概念の特徴について考察した.看護研究における共感の定義の分析の結果,日本の看護研究では多くの文献が共感の定義を心理学的定義から引用しておりにそれらは「他者の立場を自分白身のように感じながらも,自己を他者に同一化せず独立させること」とまとめることができた.また対象文献をその方法から(a)共感概念研究,(b)共感の質的研究,(c)共感性尺度を用いた量的研究に分類した.共感概念研究では日本の看護学独自の共感概念が必要であることが結論されていたが,共感の質的研究では共感が他者理解といった心理学定義にとどまらず,相互理解へと至る共感のプロセスとしてとらえられていた.また共感性尺度を用いた量的研究においてはほとんどの研究が心理学的定義を引用した上で,看護学生や看護師の共感性について共感性尺度を用いて計測していたが,各論文の研究結果は共通していなかった.以上のことから看護研究における共感概念とは心理学的な「他者理解」にとどまらず,相互理解のプロセスとして捉えられる必要があること,そしてこの相互理解のプロセスという概念が看護特有の患者-看護師間の援助関係をあらわす独特な概念である可能性が示唆された.