西田哲学における環境概念(学校法人京都外国語大学創立60周年記念号)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
西田哲学は近年,地球環境問題という観点から再評価されている。正に,西田は「環境」という概念を自分の思想に導入して,近代哲学によって世界から隔離された主観と見なされた個人と,単なる受動的客観と見なされた世界との関係を相互限定として解釈した。こうした視点から,近代哲学の抽象的な主観性の概念を突破し,人間と自然界の複雑な関係の理解を深めることができるであろう。しかし,西田哲学においては, 「環境」という概念は結局のところ個人の意識に対する他人の意識という意味にすぎず,現在我々の考える「自然環境」という意味にはならない。したがって,西田哲学を環境問題の理解に当てはめようとすれば,こうした重要な相違は無視することができない。拙論では,西田の「環境」概念の生成を探って,その意味を明らかにした上で,近代の広義の観念論から生まれた西田哲学の世界は,あくまでも人間を中心とする世界で,自然界をテーマとする思想ではないことを示したい。