量子ドットにおける熱電効果と揺らぎの定理(修士論文(2008年度))
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概要
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メゾスコピック系では主に電流や電流揺らぎなどが線形応答の領域を超えて調べられているが、熱電効果はそれらの物理量とは相補的な情報を与える。熱電効果の研究にはKelvin-Onsagerの関係式が使われる。Kelvin-Onsagerの関係式を用いると測定の難しい熱流を直接扱わずに済むが、これは線形応答の範囲でしか成り立たない。一方、統計力学の分野で知られている揺らぎの定理は、時間反転対称性もしくは局所詳細釣り合いのみによるため非線形非平衡領域でも広く成り立つ。この揺らぎの定理については、量子輸送系において完全計数統計の手法を用いて電流と熱流の揺らぎの定理を導出することができ、非線形領域における関係式を得ることが出来る。本研究ではこれを熱電効果に適用し、非線形領域におけるPeltier係数を電流に関する輸送係数で表せることを示す。これは非線形応答領域におけるKelvin-Onsager関係式のような役割を果たし、近年行われている非線形効果を用いた熱電素子の研究に役立つと考えられる。形式としてはKeldysh形式及び完全計数統計の枠組みを用いて行い、具体例として二端子二重量子ドットABリング干渉計における計算を示した。
- 2009-05-20