アミノ酸発酵菌開発の現状と課題(<特集>物質生産を指向した基盤研究と連携研究展開上の課題(II))
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概要
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アミノ酸発酵は今から約100年前に創生されたアミノ酸事業を背景に,およそ50年前にわが国で誕生し,産学連携の下学術的発展を遂げると同時に,アミノ酸事業の更なる拡大,グローバル化を支えてきた技術である.1957年,木下・鵜高らによってMicrococcus glutamicus(現在のCorynebacterium glutamicum)が,糖質を主体とする培地にてL-グルタミン酸を過剰生産することが見いだされた.この発見を契機としてL-グルタミン酸の発酵生産法が開発,工業化された.その後,生合成系路の調節機構を回避する代謝制御発酵の技術の進展と共に,アミノ酸発酵の対象範囲は拡大し,L-リジン,L-スレオニン,L-フェニルアラニン,L-アルギニンなど各種アミノ酸の工業レベルでの発酵生産が可能となった.アミノ酸発酵は,事業としても研究としても長い歴史を有する分野であり,L-グルタミン酸生産菌の発見や代謝制御発酵に関しては生物工学関連の教科書でもとりあげられている.すでに飽和した事業分野,終了した研究分野と思われている方もあろうが,そうでもない.一例として図1に飼料用アミノ酸の世界市場拡大,図2にアミノ酸発酵関連企業から出願された飼料用アミノ酸発酵関連特許公開数の推移を示した.現在でもアミノ酸の世界市場は右肩上がりに伸張しており,アミノ酸発酵関連特許も毎年多数出願されている.拡大する市場をめぐって国際的に熾烈な競争が繰り広げられており,事業的にも技術的にもきわめてアクティブな領域である.本稿では,50年の歴史をもつアミノ酸発酵の研究開発が近年どのようなかたちになりつつあるのか,また将来はどのような可能性を目指しているのかについて,いくつかの例をあげて説明したい.アミノ酸発酵の研究開発の主体は現在ではそれを事業として推し進めている各企業であるが,基盤となるべき学術分野では大学などの公的研究機関との共同研究が多々進められている.企業と大学を含む社外研究機関とのコラボレーションを実施する際の利点・課題などにも触れていきたい.
- 2009-05-25
著者
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