中範囲比較の論拠とコンテクスト問題
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概要
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コンテクスト問題は従来、比較研究者を執拗に悩ませてきた。本稿では、比較政治分析の戦略として近年再解釈されつつある「中範囲比較」を取り上げて、この研究設計がコンテクスト問題をいかに克服しようと意図しているかを吟味する。概して言えば、この研究設計は普遍主義的渇望から戦略的に後退し、比較の範囲を限定することと引き替えに現象のコンテクスト性を考慮に入れてコンテクスト問題に対処する。この分析方針には、在来型の方針と比べると、理論を展開し検証し洗練するという比較の役割のあり方に関しても、政治の世界における因果関係とは何か、また因果推論はどうあるべきかに関しても、大きな転回が見て取れる。本稿では、こうした認識論上、存在論上の諸前提をも射程に入れて中範囲比較の輪郭を描出し、この比較戦略がその推論の説得力を範囲条件の設定と因果メカニズムの分析から引き出すことを突き止めると共に、コンテクスト問題に有効に対処し得る可能性が少なからずあることを論証する。
- 2009-03-31
著者
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