脱人間化、抽象化する自然 : 大正末、昭和初期日本文学における自然意識(伊藤虎丸教授記念号)
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概要
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大正十二(一九二三)年九月におこった関東大震災を境に、東京を中心とする日本都市社会は大きく変貌した。折しも第一次大戦(一九一四-一九一七)後あたりからそれまでの社会体制が次第にかずみを増大し、ほぼ、その臨界点に達したことにより、この震災は、単に物理的にそれまでの町並を破壊したばかりでなくより根本的に都市文明の性格そのものを一変させた。一口で言うならば、それまでの近代型文明から現代型文明への転換である。全地球的規模での政治的、経済的、文化的連動化、同時代化、人間五感にとって代わる機械情報中心社会(電信電話、映画、ラジオ)、同じく人間身体力にとって代わる機械力中心社会(各種生産機械、生活機器、電気、自動車)等々、今日にまで続く現代型文明の特質が急速に出そろい、それによって、人間の自然に対する感覚も大きく変容した。震災の翌年に、それぞれ、「文芸時代」、「文芸戦線」を創刊して活動を開始した新感覚派、プロレタリア文学両派を中心とする新興世代の文学表現にそのことは鮮明にあらわれる。
- 1995-03-15
著者
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