日本画の制作過程と素材研究 : 宇宙を求めるための華
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概要
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日本画の伝統的な古画技法についての実践的な研究は,近世まで各流派による秘事口伝として伝えられてきたこともあり,未だ解明されていない点が多く残されている.多くの画家が経験を積み重ねながら独自に研究をすすめているのが現状である.本文では,日本画作品の実践的な制作過程における材料と技法について,特に下地作りと対象を描く工程における和紙,顔料,墨の基本的な役割に焦点をあてて,今日の日本画が古画技法をもとに現代の制作に応用し工夫を行っている状況について報告する.さらに,日本画で用いる材料の性質や取扱いのみでなく,表現に求める象徴性,内面的なテ-マにいたるまで,自然との密接な関連性がある点を再認識することによって,日本の風土,自然環境を背景として日本の絵画が発達してきた様子を魅力として改めて確認してみたい.筆者は,今後機会に恵まれることがあれば,これまでの実験記録を具体的に報告していきたいと考えている.今回はその第1回として位置づけたい.写真掲載する作品は,筆者が連作として描いているテ-マ「月下美人」の花をモチ-フとした「宙」と「双」の二作品(2008年制作)である.