専門職化によって形成される専門領域と非専門領域 : その理論的枠組み
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概要
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医療・保健・福祉などの領域では,隣接した領域で様々な対人援助サービス職が専門職化しようとしている.しかし従来の専門論は,専門職化を単独の職種の孤立した現象としてとらえる傾向があるため,隣接しておこる専門職化が抱え込むジレンマを十分に分析できない.特にケアを特徴とする対人援助職,つまり人間への全体的関与を特徴とする専門職は,自らの専門性を明確に示すことができないというジレンマを生じるが,この理由について十分な分析ができない.そこでこの論文では,専門職化によって専門領域が規定されると同時に,非専門領域を作り出すという視点から,専門職化を理論的に捉えなおすことを試みる.まず対人サービスは,高度に分業化した社会において,財として交換の対象になりにくい性質を持っている.その性質は,協働性,個別性,不可視性という性質として説明できるだろう.したがって対人サービスに従事する職種は,自らの行為を社会の中で交換可能なものに規定する必要に迫られる.この対人サービスの再規定を,職業集団として組織的に追求するのが,専門職化という戦略であると言える.この戦略は,組織内部に対してはサービスの標準化を図り,外部に対しては差異化を行なっていくということである.この戦略によって,対人サービスの再規定に成功した領域と,成功しない領域が形成される.これを専門領域と非専門領域という言葉で呼ぶことにする.この非専門領域は,標準化および差異化できないような対人サービスの要素によって形成されている.この非専門領域は,ある意味ではもっとも対人サービスの最も特徴的な性質が集約されているといえるが,しかしサービス財として社会の中での交換に馴染まない領域でもある.ある職種が専門職化する際に,この非専門領域をどのように取り扱うか大きな問題となる.この非専門領域を自らの職種から切り離して他の職種に譲り渡そうとする場合が多く見られる.もっとも典型的な事例では,医師から看護職,看護職から看護補助職や介護職へ.このような非専門領域の形成およびその非専門領域の譲り渡しの連鎖が,対人援助サービスの分野で起こっている.だが見方を変えれば,非専門領域には対人サービスのもっとも重要な性質が集約されているということもできる.