『へンリー・ライクロフトの私記』 : 日本における紹介と翻訳
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概要
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ジョージ・ギッシング(George Gissing 1857-1903)は、戦前の日本においてもっぱら『へンリー・ライクロフトの私記』(The Private Papers of Henry Ryecroft, 1902以下ではHRと略称する)の作者として知られていた。ギッシングは14の長編小説を始め、短編、評論、旅行記を書いているが、同時代のトマス・ハーディと対照的に、HRと短編以外の作品が日本で広く読まれることはなかった。近年、フェミニスト意識の高まりを反映して、職種拡大のために尽力する女性解放運動家たちを描いた『余計者の女たち』(The Odd Women, 1893)の二種類の翻訳が出版されたのをはじめ、長編小説や評論、旅行記などの翻訳も相次いで現われた。だが文庫本で出版されたものを除けば、読者は極めて限られた数であろうと推測され、1920年代のHRブームのような現象は存在しない。「かつて学生だった経験のある人なら、ほとんど誰でも一度はこの作品のどこかを読んだことがあるのではなかろうか」と言われるような本自体が現在では存在しないのではないだろうか。以下HRの日本における紹介と翻訳を、当時の時代的背景に照らして考察したい。
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