小スケールのモザイク植生で構成される農地景観における歩行虫類の種構成
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概要
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歩行虫類は,農業害虫の捕食性天敵として,また農地とその周辺の環境の変化を推し量る環境指標生物として重要である.本研究では,水田,牧場,果樹園,樹林地を含む,小スケールのモザイク植生で構成される面積約40haの農地景観を調査地とし,歩行虫類を通年で捕獲して,種数と種多様度,種構成を植生間で比較した.また,各地点で得られた歩行虫類の種構成データに基づいて,除歪対応分析(Detrended Correspondence Analysis;DCA)による調査区と種の座標付け分析を行った.2003年5月から2004年1月に,ピットフォールトラップで捕獲された歩行虫類は2科7亜科40種1144個体に達し,種構成はそれぞれの植生によって大きく異なった.肉食性で農業害虫の天敵として知られるアオゴミムシ亜科は,樹林地ではほとんど捕獲されず,牧場と果樹園に多く見られた.種子食性種を含むマルガタゴミムシ亜科とゴモクムシ亜科はともによく似た分布傾向を示し,水田に多かった.全種の中で最も多く捕獲されたヤコンオサムシは,主として平地の樹林地に生息するとされてきたが,林地に隣接する農地にも進出しており,特に果樹園で多かった.歩行虫類の種構成に基づく除歪対応分析の結果,調査区は第1軸に沿って水田,牧場,果樹園,樹林地の順に並んだ.草本で覆われている水田と牧場の歩行虫相はよく似ており,樹木環境とみなされる果樹園と樹林地の歩行虫相も比較的類似していた.
- 2008-06-25
著者
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香川 理威
神戸大学大学院自然科学研究科昆虫科学研究室
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伊藤 昇
コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社
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前藤 薫
神戸大学大学院自然科学研究科昆虫科学研究室
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伊藤 昇
コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)機器開発本部画像技術開発部
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