オサムシ科甲虫を効率的に調査するための3つのアプローチ
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概要
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昆虫の多様性評価のためのサンプリングには時間と労力がかかり,データ収集の障害となっている.落とし穴トラップで得られたオサムシ科甲虫のサンプルをもちいて,この問題を解決するための3つのアプローチを検討した.第1のアプローチは設置トラップ数の削減,第2のアプローチは調査回数の削減である.これら2つのアプローチでは,群集パラメータの推定精度を下げることにより,取得すべきサンプル数を,どの程度まで削減できるのかを調べた.いずれのアプローチにおいても累積サンプルに含まれる種数は,サンプル数の増大とともに漸増し続けたので,サンプル数の削減は困難であった.一方,種多様度,均衡度,および,全累積サンプルに対する種構成の類似度は,サンプル数の増大とともに,最大累積サンプルの値に収束していった.そして,推定の誤差を20%許容すれば,12個設置したトラップを5-3個に,あるいは,30回おこなった捕獲を13-7回に削減できることが示された.さらに,第2のアプローチでは,調査時期の組み合わせを最適化することにより,推定精度の向上と,さらなる,調査回数の削減が可能となった.第3のアプローチは,頻繁なサンプルの回収を伴わない長期連続捕獲である.トラップに雨避け屋根を併設するとともに,保存液として未希釈のエチレングリコールを使用し,捕獲された昆虫の腐敗を遅延させることを試みた.その結果,少なくとも11週間の連続捕獲が可能であることがわかった.これにより,30回おこなった調査を3回に削減することが可能となる.また,このトラップは,広く普及している開放型トラップと互換性を有していた.本研究は,これら3つのアプローチのいずれもが,省力化に有効であることを示した.
- 2005-03-25