海外子会社の製品開発活動の進展プロセス : 日本コカ・コーラ社の事例
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概要
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本稿は、日本コカ・コーラ社の事例を通して、海外子会社の製品開発活動の進展プロセスを解明することを目的としている。具体的には、海外子会社の役割進化モデル(Birkinshaw & Hood,1998)を用いて、海外子会社の製品開発活動がその成果を多国籍企業内で活用される段階に至るプロセスの実証研究を行っている。日本コカ・コーラ社は、コカ・コーラグループ内で最も数多くのグループ内で活用される製品を自主開発している、すなわち最も製品開発活動が進展している海外子会社である。しかし、その段階に至るまでに、同社の製品開発活動は一時的な退行をともなうプロセスを経たことが分析結果から明らかになった。同じく分析結果から、海外子会社の製品開発活動は(1)本国親会社の役割指定、(2)海外子会社の選択、(3)現地環境の相互作用によって生成することが判明し、上述したモデルの有用性が実証された。したがって、海外子会社の製品開発活動には(1)(2)(3)のすべての要素が必要条件である。同社の製品開発活動が退行したのは、この要素の一部が欠けたためであった。また、本国親会社は海外子会社の立地する現地環境とは地理的に離れ、さらに海外子会社の製品開発活動を進展させる特性をもつ現地環境要因からの影響度が弱いために、一連の相互作用が機能しにくいことも判明した。したがって、現地環境の活用を意図した海外子会社の製品開発活動の進展には、海外子会社へ一定の自律性を付与する必要性と、(3)現地環境→(1)本国親会社の役割指定の影響関係が弱い点を補完する本国親会社と海外子会社の関係強化の重要性が明らかになった。同社の製品開発活動は、本国親会社がもともとは同社の製品開発を意図していなかったため、創発的な進展プロセスを経た。しかし、これらの発見事実は、近年活発化している現地環境の活用を意図した海外子会社による製品開発活動にも重要な示唆を含んでいることが考えられる。
- 2008-09-30
著者
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