高度経済成長期における中国企業のトップマネジメントの二十四時間 : 「時間の投入」から見る中国企業のトップマネジメントの役割
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概要
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本稿は、従来の経営者の役割に関する研究を研究者の主観的判断によって行うことに対して、「投入時間」というデータを分析する視点から経営者の役割を判断するという新しいアプローチの方法を提示している。すなわち、経営者がトップマネジメントとしての役割を果たすかどうかは、彼らが毎日経営者として有効な時間を経営の為にいくら投入したかによって判断すべきであり、そして、その有効な時間の投入によって、彼らがどのような役割を果たしているのかを分析すべきだ、ということである。本稿は、現場を取材する方法での企業調査を通じて、高度経済成長期における中国企業のトップマネジメント達の一日二十四時間を詳細に追跡することによって、彼等の活動と役割を明らかにし、「時間の投入」という新しい視点から中国企業のトップマネジメントの役割を分析するものである。結論として、まず中国企業のトップマネジメントの平均仕事時間は、8時間以内が19%、8-10時間が38%、10-12時間が35%、12時間以上が8%とそれぞれであるが、全体的に見ればその仕事時間は非常に長い。つまり、一般的な中国人の働き方と違って、トップマネジメントの長時間労働とその精勤ぶりが際立っていると言える。次に、中国企業のトップマネジメントの消費時間の内容とその特徴についてみると、戦略策定と戦略経営が中国企業のトップマネジメントが最も重要視している仕事である。また、部下を指導して経営目標を達成し、従業員全体と意思疎通を図って求心力を強化することにも多くの時間を使っているが、これは、中国企業のトップマネジメントにとって企業内部での権威確立や人材確保がたいへん重要であるからである。更には、様々なコミュニケーションをして共産党や政府との関係、企業間の関係、社会関係などを構築し維持することによって企業経営を展開していく対外活動にも時間をかなり費やしている。第三に、時間の投入から見た中国企業のトップマネジメントの役割は、おもに戦略策定者、戦略経営者という「戦略家」、部下を指導して経営目標を達成する経営リーダー、指導者という「指揮家」、従業員全体と意思疎通を図って求心力を強化する従業員激励専門家、政府のバックアップや社会資源を説得の上調達する「対外活動家」の四つの役割に集中されている。最後に、中国企業のトップマネジメントの時間投入に影響を及ぼす要因としては、主に、高度経済成長期における企業競争の激化や経営環境の激しい変化の影響、意思決定における集団主義ないし全体責任制の影響、複数の中国企業のトップマネジメントの兼務が多いこと、自分の責任が明確化されないこと、中国文化に適応するコミュニケーションの慣習、そして、政府政治や「官本位」などの影響、の五つがあると考えられる。
- 2008-09-30