グローバル企業における企業価値創造のキーファクターとしての内部統制
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概要
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相次ぐ企業不祥事に端を発し、ディスクロージャーの信頼性、財務報告の適正性確保の観点より、国際的な潮流は内部統制強化に向かい、法及び各種制度による要請に企業は取り組まざるを得ない状況に置かれている。そうした中、国境を越えたM&Aの流れが加速しており、企業価値をいかに創造するのか以前にもまして問われている。SOXおよび日本版SOXにおける内部統制強化に関する法および各種制度における議論が主流のものの一体、どのようにすれば内部統制による企業価値創造への可能性があるのかといった議論が少ないのが現状である。そこで、本論では、自ら現場にてSOX対応を行ってきた経験および弊社におけるアンケート調査結果を踏まえ、企業価値創造への可能性についてグローバル企業におけるSOX法対応を通じて考察してみたい。米国早期適用会社において数々の問題が生じ、とりわけコストと作業時間が大きなウエイトを占めたといわれるSOX法対応であるが、グローバル企業の日立製作所は、ニューヨーク証券取引所に上場しているため2006年7月15日以降に終了する事業年度から米国SOX法の対応をしなければならない。そこで、既存する内部統制の仕組みを活かし、再構築する整備・改善・強化という2段階のアプローチをとった。整備フェーズでは、文書化作業等による可視化を通じて、改善点を把握し、改善・強化フェーズでは、ITを活用した抜本的改善による内部統制強化を図ったのである。すなわち、内部統制再構築・評価により、(1)業務プロセスの統制、(2)リスク要因の可視化、(3)証跡の取得と保管、(4)統制を支える基盤の確立という内部統制強化を行った。その結果、さらなる付加価値へ向けて、日立グループ全体において、財務報告に係るプロセスだけでなく、全てのプロセスにおける内部統制まで踏み込んで、展開していく予定であり、企業価値創造への可能性を示唆していると考えられる。
- 2008-09-30