シュリーパルヴァタとナーガールジュナ : 伝説と歴史,地理的考察
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概要
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チベットの諸伝がNagarjunaの居住地として言及しているdPal gyi riは,通常,Sriparvataと還梵される.1920年代,Nagarjunakondaの発掘調査によって当地がSriparvataと呼ばれていたことが判明して以降,NagarjunakondaはNagarjunaの故地と見なされてきた.しかし,SriparvataとNagarjunaの関係を伝える文献がいずれも12世紀以降に成立しているという事実には注意を要する.インド文学の世界においてSriparvataはMahabharataの時代より,Sivaの聖地として言及されてきた.ことに7世紀以降は,SriparvataとSiva教のタントラ行者たちとの関わりを説くものが散見されるようになり,当地がタントラ行者たちの聖地として知られていたことがわかる.長生術と復活を主題にしたNagarjunaの伝説が,Sriparvataにまつわる霊験譚として語られた背景を探っていくと,Sriparvataがnathaやsiddhaと呼ばれたタントラ行者たちの聖地であったことが見えてくる.後に,Siva教のnatha/siddhaの伝統において,NagarjunaはRasayana(長生術)の大成者,Rasasiddhaとして知られるようになっていく.アンドラ地方のクリシュナ河岸に位置するSrisailamは,中世を通してnatha/siddhaたちの宗教活動を育む土壌として機能し続けてきた.ことに当地が,Rasayanaを実践するための適地として見なされ,また,しばしばSriparvataとも呼ばれていたことは注目に値する.以上のことを考慮するならば,チベットの諸伝がNagarjunaの居住地として言及したdPal gyi riは,natha/siddhaたちの間でRasayanaの地として知られたSrisailamであった可能性が高いといえるのである.
- 日本印度学仏教学会の論文
- 2009-03-25
著者
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