賢治文学におけるユートピアの新展開 : 希望と悲嘆との狭間
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概要
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賢治の初期作品「双子の星」に措かれた天上世界や、大正十三(一九二四)年に生徒に筆写させた「黄いろのトマト」に現われた現代風で且つ原始的な楽園などのユートピアは、現実世界と遠く離れているか、あるいは、どこか人に知られぬところにあるものである。このようなユートピアは、「黄いろのトマト」の結末で示唆されているように、醜悪な現実世界との接触、衝突などのプロセスを経て、相対化されてしまって、結局、崩壊するに至ることを免れない。それまで夢見つづけてきたユートピアの崩壊の結末を受けとめ、次のステップへの出発、つまり新しいユートピアの再構築に立ち向かうのが大事であろう。賢治作品の世界はこの時期(大正十三(一九二四)年)から、どのような変化が現れてくるだろう。本稿では、大正十三年ころから賢治の言説によく出てくる「新しい」という言葉に注目し、賢治におけるユートピアの新展開が、どのようになされているのかを、考察してみたい。
- 九州大学の論文
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