阿武隈変成帯の含十字石岩
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概要
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従来都城らによって,中生代の比較的高温低圧の変成作用の産物とされていた,阿武隈変成帯の竹貫変成岩中に見出された,合十字石岩とそれに伴なう数個のやや特異な岩石について記載した.前者の鉱物組合せとしては,十字石-鉄スピネル-鉄ばんざくろ石-珪線石の他に黒雲母・自雲母・真珠雲母・緑泥石・曹長石または中性長石・鋼玉等を伴なうものが見られるが,化学分析の結果からはいずれも,SAF図のスピネル-鉄はんざくろ石-珪線石3角形内に入る.これらの含十字石岩は概して珪酸に著しく不飽和で,アルミナと鉄に富み,マグネシア・石灰・アルカリにとぼしく,化学的に特異な岩石であるが,十字石および鉄ばんざくろ石にはしばしば細粒の石英が包有されていて,これらの鉱物がかって互に平衡関係にあったことを暗示している.十字石は鏡下で比較的均質で包有物も少いが,化学分析の結果はJUURINENによるイオンの荷電数の一致しない式H_4Fe_4Al_<18>Si_8O_<48>に最も近く,X線的にもPizzo Forno産のものに一致している.一方この地方の十字石には漸移的ではあるが,色がこく屈折率が高く光学性正のものと色がうすく屈折率も低く負のものとの2型が認められ,後者は前者から二次的に変ったものと考えられる.また輪かくは一般に自形的でありながら,珪線石・鉄スピネル・緑泥石・雲母類になかは交代された不安定な型態を示すことが多い.その他,含十字石岩およびこれに伴なう変成岩について,一般に長石類が累帯構造を示すこと,鋼玉その他も残存鉱物的な不安定な型態を示すものが多いばかりでなく,二次的変成を受けた鉄ばんざくろ石角閃岩の存在することなどから,かって杉が想定したように,この地方には前記の変成作用以前に比較的低温高圧の変成作用が行われ,十字石等はその時の残存鉱物である可能性が大きい.
- 1965-11-30
著者
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蟹澤 聡史
Dept. Of Earth Sci. College Of Arts And Sciences Tohoku Univ.
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字留野 勝敏
Miyagi-ken First Girls' Senior High School
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字留野 勝敏
Miyagi-ken First Girls' Senior High School