九州大学北海道演習林におけるナラ材伐木造材作業の功程調査報告
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
作業の標準功程の設定は賃金形態の確立,賃金率の決定の他,予算統制,事業計画,同管理の上に重要性を有するものである.しかしながら林業においては,伐木造材作業をはじめどの作業においても功程を左右する要因が極めて雑多なため,その標準化はなかなか困難である.特にミズナラの伐木造材については,現在はミズナラの用材生産が特に限られた地方でしか行われていない理由もあつて,功程の標準設定に関する調査報告は全く見られない.そこで本報告は九州大学農学部北海道演習林において,ミズナラその他の樹種について行われた昭和30年度直営素材生産事業の伐木造材作業について昭和31年度卒業の学生が行つた功程調査の資料について,功程左右要因若干について検討し,更に基準功程表の調整を試みたものである.I.功程分析に先だち,調査の対象となつた昭和30年度直営素材生産事業の概況を述べた.11.功程調査4名の作業者を選んで,伐木造材作業を時間観測してA)要素作業時間を分析した.この作業においては,余裕時間と実働時間の割合は32.7%及び67.3%で又主体作業の平均エネルギー代謝率は5.99であつた.又標準作業時間8時間(480分)を夫々の要素作業に按分すると伐木主体作業に72.5分,同附帯作業に22分,造材主体作業に172分同附帯作業に36分が配分される.B)功程を左右する要因のうち次のものについて考察を加えた.即ちa)立木の大きさと伐木,造材の主体作業時間及び附帯作業時間との間には可成り密接な関係があり,直径が増大すれば作業所要時間も直線的に増加する.しかしながら伐木附帯作業時間には明かな関係は見られない.b)造材歩止率の大小は,当然伐木作業所要時間には何ら影響を及ぼさないが造材作業所要時間特に附帯作業所要時間には,可成り大きな影響を及ぼしている.c)作業者毎に直径に対する所要時間の間の回帰を計算すると作業者毎の功程は夫々異つていて,作業者年令が特に,功程に影響を及ぼしているようであつて,年令が若い程(ある範囲内で)所要時間は小さい(功程が大きい). 又経験年数については一定の傾向は見られない.d)伐倒方向が違えば伐倒所要時間は夫々差異があるようであるが資料が少く十分の分析は出来なかった.e)立木1本当り伐採本数(丸太)の差異或は材種の差異による作業所要時間の差異は見られない.C)功程表の調整 4名の作業者の功程を平均して,基準功程表を調整した.D)この功程を検討する資料を欠くが,昭和30年度直営素材生産事業の伐木造材作業の賃率決定の際に基礎とされた標準功程に比べると可成り高すぎるようであるが,この功程表の値が過大に設定されているか,或は賃率決定の標準功程が過少に評定されているかについては後日資料を得て検討したい.
- 九州大学の論文
著者
関連論文
- 標本抽出法による九州大学宮崎演習林第二次蓄積調査報告
- 演習林の経営分析(第2報) : 粕屋演習林の昭和31年度財務分析報告
- 九州大学北海道演習林におけるナラ材伐木造材作業の功程調査報告
- スズタケ密生地の地拵作業功程調査報告