8.地域性を考慮した地震動評価のための地盤情報の活用

概要

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1.目的阪神・淡路大震災によって,都市の地震に対する脆弱性が露呈し,地震防災や耐震設計に対する関心が高まっている.地震動は震源のメカニズムやその地域の地盤の影響を強く受けるため,個々の場合における震源,伝播経路,表層地盤を考慮しなければならない.従って,その地域に影響を与える活断層,歴史地震,地域の地形・土質・PS検層などのデータを適切に活用する必要がある.この様な背景から,著者らは,EWSのX-Window上でこれらのデータのビジュアル化を行い,都市地震防災に関する情報をインタラクテイプに活用できるGISを構築してきた.しかし,地震動を評価するために重要な表層地盤のデータは十分に整備されていない.PS検層データは名古屋市域で80地点ほどしかなく,ポーリングデータでも名古屋市を125mメッシュに分割した時の約20,000個の内4190個しかない。また,データがあった場合でも,その調査深さは地震動の評価に十分な深さではなく,名古屋市域外では,さらにデータは不足する.従って,限られた地盤データから地域性を考慮した地震動を評価するためには,地質断面図や周囲のデータからの推定や補間の必要がある.本報では,名古屋市域と愛知県域の地盤情報の補間とその活用例を示す. 2.方法できる限り正確なデータを得られるように,PS検層データ,ポーリングデータ,最新名古屋地盤図の地質年代等高線,国土数値情報の順に利用する.まず,PS検層データがある場合はそのまま利用する.ボーリングデータがある場合は,PS検層データより作成された,N値・深度・土質種別・地層年代を説明変数とする重回帰式より,S波速度と単位体積重量を推定する.次に,最新名古屋地盤図の地質年代等高線図をデジタイザーでベクトルデータに数値化し,有限要素法の自動三角形分割プログラムを利用して,メッシュデータに変換し,地層境界深さの平面的な分布から地層構造を推定する.推定された各地層面の標高から,任意の地盤の断面図を作成し,地質年代・深さを得る.この地質年代と深度から,同様に作成された地質年代・深さを説明変数とする重回帰式により,S波速度と単位体積重量を推定する.深さ方向に関しては,愛知県東海地震被害予測調査報告書のS波速度等高線図を同様な手法でメッシュ化したものにより補う.一方,名古屋市域外ではボーリングデータも地質年代等高線図も無いので,国土数値情報を利用する.想定東海地震時の基盤最大加速度を計算し,愛知県が行った想定東海地震時の地表最大加速度との比をその地点の最大加速度増幅度とし,これを目的変数として国土数値情報の標高・地形・地質を説明変数とする重回帰式を作成し,最大加速度増幅度を推定する. 3.結果作成された地質年代等高線,重回帰式,増幅度を著者らのGISに組み込むことにより,任意地点の断面図や伝達関数を表示したり,任意の地震に対する地表最大加速度を求めることが可能となった.また,重回帰式により推定したS波速度とPS検層による実測値とは相関が高く,国土数値情報から推定した増幅度に小林・翠川の手法により求めた基盤最大加速度をかけあわせたものは,1944年の東南海地震の推定震度と調和的であった. 4.結論地質年代等高線などの数値化と重回帰式の作成により,名古屋市域の任意地点の地盤のモデル化が可能となった.また,国土数値情報を用いた重回帰式の作成により,広域に渡る地震動の最大加速度分布を推定することができた.

8.地域性を考慮した地震動評価のための地盤情報の活用

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