21.震災時の建物被害と人的被害の関連分析

概要

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近年の地震では建物倒壊による死亡者数は少なかったが、今回の阪神・淡路大震災では早朝の地震で多くの人が就寝していたこともあり、死者のほとんどが建物倒壊による住家の下敷きが原因で、火災によると思われる死者は約9%であった。しかし、この火災による死者は、いずれも住家にとじ込められた状況での死亡で、関東大震災時の屋外での多数の焼死とは大きく状況が異なっている。こうした背景を踏まえ、本研究は、被害想定における人的被害想定手法の検討に資することを目的として、阪神・淡路大震災における建物被害と人的被害の関連を分析を行ったものである。町丁目レベルという小さな地区単位別の全壊棟数と死者数の関係を見ると、全壊棟数1棟当たり約0.08人の割合で死者が発生しており、0切片回帰の形式でも0.8以上の相関係数が得られているが、データのバラつきはやや大きい。また、区市町レベルの地域単位で建物全壊棟数と各区市町の焼死・熱傷を除く死者数との関係を見てみると、東灘区における全壊棟数に対する死者の発生数の割合が他の区市町に比べ著しく大きな値となっており、この東灘区のサンプルを除くと関係式は、y=0.0472x (相関係数=0.948)となり、相関係数も非常に高い値を示した。区市町レベルの本分折からは、全壊棟数1棟当たり約0.05〜0.06人の割合で死者が発生していることがわかった。一方、対象とした9区、9市、3町の地域特性に係わるデータとして、人口密度(国勢調査[平成2年]に基づく)、住宅の木造比率(住宅統計調査[平成5年]に基づく)についても見てみたが、これらのデータからは東灘区における死者多発に係わる特異性を把握することは出来なかった。人的被害推計の説明変数としての建物被害が小さい場合は、死者発生率(死者数/全壊棟数)のばらつきが大きく、建物被害から人的被害の推計を行う際の誤差も大きい。従って、死者数の数量的な把握といった目的のために両者の関係を用いる場合においては、ある程度まとまった地域単位、すなわち区市町村単位程度の地域単位で、両者の関係を捉えた方がより有効であると考えられる。地震防災における人的被害の軽減策を検討するためには、震災時の建物被害と人的被害の関係を明らかにすることが重要である。それには、さらに建物構造別の建物被害と人的被害発生との因果関係を分析することが必要である。本研究では、建物彼害に関するデータの制約により行えなかったが、今後の大きな課題である。

21.震災時の建物被害と人的被害の関連分析

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