55. 都市地震防災地理情報システムの構築と名古屋市域の地盤情報の活用

概要

論文の詳細を見る
都市地震防災地理情報システムの構築地震動は震源のメカニズムやその地域の地盤の影響を強く受けるので,地域性を考慮した地震防防災を行うには,その地域に関する多種多様なデータを適切に活用する必要がある.一般に,これらの情報量は膨大であるため,コンピューターの利用が不可欠であり,データやシステムの信頼性を確保するためには,ネットワークによる分散型のシステムとする必要がある.一方,既往の地震被害予測では,関東地震のような過去の代表的な地震を想定した被害予測が主流であった.しかし,地震動の性質は同一ではなく,地震防災は,事前対策,発生直後,復旧,復興と時間変化についても考えるべきである.従って,任意の地震に対して、「位置」や「時間」を考慮できるシステムでなければならない.一方,情報処理技術などの発達により,地震発生直後に地震被害予測を行えるようになりつつあり,リアルタイムに地震被害予測を行うためのデータの整備やシステムの構築が必要である。このような背景から,処理が高速で,グラフィック性能,ネットワーク環境に優れているEWSのX-Window上で都市地震防災に関する情報をインタラクティプに活用できる地理情報システム(GIS)を構築する.本システムでは,一貫した枠組みの中でインタラクティプに地震動を予測する.まず,サイトに影響を与える地震を想定し,基盤地震動を作成する.次に,表層地盤の物理モデルを作成し,伝達関数を算出する。最後に表層地盤の伝達関数と基盤地震動とかけ合わせることにより,地表面地震動を予測する.この際,震源の想定には,震源の位置とマグニチュードのデータが必要であり,過去の地震記録や活断層データが利用される.また,表層地盤の伝達関数の推定には各層のS波速度や単位体積重量,減衰定数が必要であり,PS検層データやボーリングデータから得られる.さらに,都市地震防災に必要となるデータとして,建物,ライフライン,などのデータを収集し,都市地震防災の基本となる地域ごとの地震動の把握に利用する. 名古屋市域の地盤の情報の活用先に述べたように,地震動は表層地盤の影響を強く受けるので,その地域の表層地盤の振動特性を把握することは重要であるが,名古屋地盤図データベースでは,地震動評価において必要となるPS検層データは十分にあるとはいえない.そこで,名古屋地盤図データベースのボーリングデータから数量化理論I類による推定式を作成し,S波速度,単位体積重量,減衰定数を推定した.しかし,すべての地点でボーリングデータがあるわけではなく,調査深さが地震基盤まで達していないなど,地盤情報が不足している所もある.従って、地質断面図や周囲のデータから推定や補間する必要がある.本報では,最新名古屋地盤図の地質等高線図をデジタイザにより数値化し,任意地点の地層構造の推定を試みた.これにより,任意の地盤断面図から地盤の物理モデルを作成し,地盤の地震応答解析を行うことができつつある. 結論地震防災GISの構築により,名古屋市域において任意の地震に対する地表面地震動の把握が可能となりつつある.今後は,行政境界,道路,鉄道,水利などの都市情報や家屋情報,人口分布などから各種の地震危険度マップを作成したい.特に.町丁目のポリゴン化を行い,行政単位で被害想定を行う予定である.

55. 都市地震防災地理情報システムの構築と名古屋市域の地盤情報の活用

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク