エルビウムヤグレーザーによる象牙質の蒸散 : 蒸散深さと被照射面の状態
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概要
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Er:YAGレーザーのもつ波長は水の吸収スペクトルと一致していることから,水を含む被照射体の蒸散が可能であると報告されている.しかし,Er:YAGレーザーを使用した歯質の蒸散において,蒸散深さを予測することは困難で,照射出力やパルス数,照射時間,照射方法,先端チップの形状等だけでなく被照射体の性状によっても異なるものと考えられる.被照射体に関しては,口腔内環境において多くの水分を含有していると考えられる罹患象牙質に対してEr:YAGレーザーを使用することで選択的な除去の可能性が推測される.そこで,本研究ではウシの歯を使用して,健全な象牙質と人工的に脱灰した象牙質を被照射体として,Er:YAGレーザーの照射出力の違いによる蒸散能と被照射面の性状変化を調べることを目的として実験を行った.蒸散深さに関しては,C400Fの先端チップを使用して被照射面に接触照射し,総照射エネルギー量を同一にしたものと照射時間を一定にしたものについて検討した.そして,性状変化についてはエックス線回折にて調べ,さらに,被照射面の形態変化についてはSEMにて観察を行った.本実験条件において,Er:YAGレーザーの象牙質蒸散深さは,総照射エネルギー量に依存しておらず,1パルス当たりの照射エネルギー出力に左右されるものと考えられた.蒸散深さと照射エネルギー出力の関係は,健全象牙質において一次関数で良好な相関が得られ,蒸散深さの予測が可能と考えられた.また,水分を含んでいると考えられる脱灰象牙質では健全象牙質よりも蒸散深さが増加しており,56〜112mJ/pulse・10secで240〜290μm程度の蒸散深さが得られることから,蒸散深さの予測の一助となるものと考えられた.XRDでは,両試料条件において,レーザー照射でハイドロキシアパタイトの結晶性の向上がみられた.SEM所見から,同一の照射エネルギーでも象牙質表層の性状の違いにより被照射面は,おのおの異なった形態が観察された.
- 2007-06-30
著者
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岩井 啓寿
日本大学松戸歯学部う蝕抑制審美治療学講座
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岩井 啓寿
日大松戸歯・う蝕審美
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岩井 啓寿
日本大学大学院松戸歯学研究科日本大学松戸歯学部う蝕抑制審美治療学講座
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岩井 仁寿
日本大学松戸歯学部う蝕抑制審美治療学講座
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岩井 啓寿
日本大学大学院松戸歯学研究科
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岩井 仁寿
日大・松戸歯・保存修復
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