がん告知後に手術療法を受ける患者のストレス体験とその変化
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概要
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近年、インフォームド・コンセントの普及に伴い、がん告知後に手術療法を受ける患者が増加している。がん告知後に手術療法を受ける患者は、がん告知による心理的ストレスに加え、手術療法を受けることに関連した心理的・身体的ストレスを体験することが推測される。がん告知後の心理的反応に関する先行研究は、横断的研究がほとんどであり、手術前後を通じてストレス体験の変化を克明に追跡した研究はほとんどない。そこで本研究では、がん告知後に手術療法を受ける患者の手術前後におけるストレス体験と、その変化を明らかにすることを目的にした。がん告知後に手術を受ける患者16名に対し、医師によって手術前2回、手術後に2回の説明が行われ、それぞれの説明が行われた後に、半構成的質問紙を用い、面接(【がん告知後】【術式の説明後】【手術結果の説明後】【今後の治療方針の説明後】)を行った。説明は主治医によって行われ、患者の同意を得た上で調査者が全て同席した。分析はBerelsonの内容分析の手法を用い、ストレス体験を機能的に抽出した。がん告知後に手術療法を受ける患者のストレス体験は、《がんへの恐怖》《死への恐怖》《がんの罹患による衝撃》《社会的関係の喪失への不安》《がんの罹患への無念さ》《がんの実感のなさ》《がんの実感》《健康への自信の喪失》の8種類に分類された。がん告知後に手術療法を受ける患者のストレス体験の変化は、以下のとおりであった。《がんへの恐怖》は対象者において【がん告知後】【術式の説明後】【手術結果の説明後】【今後の治療方針の説明後】の全期間を通して、半数以上に持続してみられたストレス体験であった。《死への恐怖》《がんの罹患による衝撃》《社会的関係の喪失への不安》は【がん告知後】に半数以上が言及したが、【術式の説明後】以後は減少した。数は少ないが、《がんの実感のなさ》は【がん告知後】に表出され、【術式の説明後】以後は減少した。一方、《がんの実感》は【がん告知後】にはストレス体験として表出されなかったが、【術式の説明後】以後は、数は少ないものの出現した。以上より、がん告知後に手術療法を受ける患者には、がん告知による様々なストレス体験が手術前後を通して存在し、患者はがんを告知され自己の存在を脅かされているという精神的苦悩に直面していることが明らかになった。したがって、それらの精神的苦悩に対する専門的な看護介入の必要性が示唆された。
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