マクロ経済学におけるマルサスの位置づけ
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概要
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1939年「雇用・利子および貨幣の一般理論」をケインズが著したことでマクロ経済学は誕生した。そのケインズは、マルサスを自らの先駆者として位置づけた。しかしマルサスをしてケインズ学派の先行者とみなすかどうかは未だ決着をみた議論となっていない。マルサスからケインズへの流れを探求しようとするとき、多くの場合、「古典派」経済学大系とケインズ経済学大系のように二分し、マルサスがどちらの領域に属するかという議論となっているためである。例えば貯蓄と投資の認識の相違、或いは「有効需要論」の相違例が挙げられる。本稿はこれに疑問を持つ。なぜならケインズが最も大きな関心を持ったのは失業問題であった。従って、マルサスとケインズの理論的親近性を論じる際、「失業」を両者がどのように見ていたかを論じる必要があるだろう。本稿のねらいは、マルサスとケインズの「失業」への認識を整理し、「不完全雇用状態」の発生プロセスを明らかにすることにある。そして、不完全雇用均衡論理から有効需要原理への展開としたとき、マルサスをケインズの先行者として考える道筋を提起することにある。