周作人の日本留学 : 『知堂回想録』第二巻翻訳、あわせて紹介
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概要
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周作人(Zhou Zuoren 1855-1967)は中国の大作家で日本研究者である。日本留学後、北京大学教授をつとめ、新文学の方向を示した多数の文章で、一時期は兄魯迅をも凌ぐ名声であった。第二次大戦中、周一家は北京にとどまったことから、対日協力のかどで戦後一時期下獄した。そして文化大革命の時に悲惨な死方をした。ここに訳出した彼の自伝『知堂回想録』の第二巻には日露戦争直後に日本へ留学した様が実に見事な筆致で記されている。来日途中の上海での便所紙の話、辮髪を切る話の一つ一つの話を読むだけでも、文学として面白く、文化史的観察として興味深い。東京の本郷界隈で生活したが、湯島の伏見館という下宿を記録してこれほどリアルな記述は当時の日本の作家にもないのではあるまいか。微力をもかえりみず拙訳を掲載させていただく所以である。