巡礼女エゲリアの闇
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概要
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筆者が長年調査を行ってきたトルコ共和国ムーラ県フェティエ市のエリュデニズ地域には、十指に余る多数の4〜6世紀頃の教会堂遺跡が存在するが、その中でゲミレル島上の第H会堂には、半円形の祭室apsisを取り巻くように円環をなす小トンネルが設けられている。その突き当たりには元来聖遺物を納めていたと思われる棚が設けられており、トンネル左右の壁面には多数の祈願のためのグラフィッティが刻み込まれている。本論はそのグラフィッティの解釈はまず措いて、この一種の地下墓所(クリュプタ)である小トンネルの持つ祭祀的機能がどのようなものであったかを考える。さらにその特異な構造から必然的となる闇の空間のもつ宗教的、心理学的な意味と機能を、古代・中世の文学的トポスとの関連で探ってみたい。