DNA損傷3'末端に対するaprataxinの修復機能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早期発症型失調症の病因蛋白aprataxinは,核酸分子の加水分解反応を触媒するhistidine triad motifを有する核蛋白で,DNA単鎖切断損傷修復(single-strand break repair:SSBR)の足場蛋白として働くX-ray repair cross-complementing group 1 protein(XRCC1)と結合することから,DNAに対する加水分解作用を介してSSBRにおいて何らかの役割を担っていると想定される.DNA単鎖切断損傷(single-strand breaks:SSBs)では,その発生過程で糖鎖切断の結果,切断部3'-末端にリン酸基,ボスホグリコール酸(phosphoglycolate:PG)基,または不飽和アルデヒド基などの修飾基(3'-ブロック)が形成される.SSBRの初期過程で,これら3'-ブロックが加水分解され水酸基に変換されると,その後の修復反応,すなわち,DNApolymeraseによるDNA合成とligaseによるニックの連結が可能となる.本研究では,SSBRにおける損傷3'-末端のプロセッシングにaprataxinが関与しているか否かを明らかにするために,組み換えヒトaprataxin蛋白を作製し,3'-末端に種々の修飾基を伴うDNAを基質として酵素学的検討を行った.その結果,全長型aprataxinがDNA3'-末端のリン酸基とPG基の加水分解反応を触媒する活性,すなわち,DNA3'-phosphatase活性および3'-PG hydrolase活性を有すること,DNA polymeraseとligaseの共存下で3'-ブロックを伴うSSBsを修復可能であること,さらに,疾患関連変異体ではこの3'-ブロック除去活性が失われることを明らかにした.これらの結果は,aprataxinが3'-ブロックの除去活性を通してSSBRにおいて直接的な役割を果たしていること,また,3'-ブロックを伴うSSBsが修復されずに蓄積することが本症の病態に深く関係していることを示唆している.