傍腫瘍性神経症候群の宿主要因としての制御性T細胞機能遺伝子発現の解析
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概要
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【背景と目的】傍腫瘍性神経症候群(PNS)は,担癌患者に自己免疫学的機序により生じる特徴的な神経症候群であり,腫瘍抗原により活性化された免疫系が腫瘍との交差抗原を持つ神経組織を傷害する機序が考えられている.同一組織型を持つ担癌患者のなかでPNSを発症する頻度は1%前後とされ,発症症例には何らかの宿主要因が存在する可能性が推測される.一方,自己免疫疾患では免疫自己寛容の破綻が生じていると考えられており,近年,末梢性免疫寛容に重要な働きを担うCD4陽性CD25陽性制御性T細胞(Treg)との関連が注目を集めている.本研究では,PNSにおける免疫制御系の動態をTreg分画の機能遺伝子の発現を定量的に評価することで,免疫制御系の機能異常がPNSの宿主要因である可能性を検討することを目的とした.【方法】肺小細胞癌(SCLC)を伴うLambert-Eaton筋無力症症候群(LEMS)(LEMS群),抗Hu抗体症候群(Hu群),抗Yo抗体症候群(Yo群)について,神経症候のないSCLC(SCLC群)および健常者(HC群)を対照として,末梢血のリンパ球亜分画分布パターンをフローサイトメーターを用いて比較し,さらにセルソーターで分取したTreg分画の機能遺伝子mRNA(FOXP3,TGF-β1,CTLA-4,GITR)発現をリアルタイムRT-PCR法で定量的に解析した.【結果】リンパ球亜分画分布パターンでは各群間に明らかな差はみられなかった.LEMS群では神経症状を呈さないSCLCに比べ,FOXP3,CTLA-4の発現が低下していた.また,Hu群,Yo群では神経症状のないSCLCに比べFOXP3,TGF-β1発現が低下していた.【結論】PNS患者末梢血では,免疫制御に関わるTregの複数の機能遺伝子に発現低下がみられ,PNSにおけるTregの機能低下を示唆する所見と考えられた.Tregの機能低下は,免疫寛容の破綻を引き起こし,自己免疫機序による組織傷害を生じうるため,PNSの宿主要因になりうると考えられた.
- 新潟大学の論文