高コレステロール血症における血清アミロイドAと頚動脈硬化症に関する臨床的研究 : 慢性炎症に及ぼすスタチンの効果について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】高コレステロール血症は心血管疾患の重要な危険因子である.その背景には動脈硬化の進展がある.慢性炎症はこの段階で重要な役割を果たし,各種の炎症性サイトカインの関与が報告されるようになった.近年,高感度CRP測定法が確立され,心血管疾患発症の予測因子になるとのエビデンスも確立されている.また,動脈硬化病変の早期かつ非侵襲的な評価に頚動脈超音波検査が有用である.しかし,炎症時に増加する急性相反応物質のなかでも,血清アミロイドA(SAA)に関する検討はいまだ少ない.そこで,今回我々は,高コレステロール血症患者のSAAを測定し,頚動脈病変との関連及びHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)による治療効果を検討した.【方法】検診で高コレステロール血症を指摘された患者(H-chol群)および正脂血症(Control群)を対象とした.一部にスタチンを投与し,治療前後の血清脂質値および血清アミロイドA,高感度CRP値,内膜中膜肥厚度(IMT)を比較した.【結果】(1)H-chol群では,血清アミロイドA値と高感度CRP値のいずれも,対照群に比し有意に高値であった(SAA:5.53±4.59vs.4.10±3.43μg/ml,p<0.05;hs-CRp:0.97±0.70vs.0.60±0.60mg/L,p<0.01).(2)スタチン治療をした高コレステロール血症群(HC-St群)と対照群を比較すると,HC-St群では73.7%,Control群では13.4%の頚動脈肥厚病変(maxIMT1.1mm以上もしくはプラークが存在)を認めた.また,HC-St群のmaxIMTは,Control群に比し,有意に高値であった.(maxlMT:0.97±0.70vs.0.60±0.60mm,p<0.01).(3)HC-St群42名におけるスタチン治療前後での比較:スタチン治療前後で,TC-24.6%,LDL-C-32.4%,TG-19.2%の有意な低下を認めた.HDL-Cは有意な変化を認めなかった.また,血清アミロイドA値は有意に低下し,高感度CRP値は低下する傾向を認めた.さらに,頚動脈病変を持つ場合に血清アミロイドA値は低下する傾向を示した.また,血清アミロイドA値が8μg/ml以上と高い群および高感度CRP値が1.Omg/L以上と高い群では有意な低下を認めた.【考察】高コレステロール血症患者において,血清アミロイドA及び高感度CRPは有意に増加し,頚動脈肥厚は対照群に比して重度であった.血清アミロイドAと頚動脈肥厚の重症度との関連はないものの,血清アミロイドAや高感度CRPの基礎値の高い患者など,慢性炎症を基盤とする動脈硬化症のリスクが高い患者では,スタチン治療が血清アミロイドAを有意に低下させ(p<0.05),頚動脈肥厚患者でも低下する傾向があった(p=0.06).血清アミロイドAを指標とする高コレステロール血症患者へのスタチン治療が,その脂質低下作用に加え,抗炎症作用を介し,動脈硬化の予防と抑制に有用である可能性が考えられた.
著者
関連論文
- 4 抗アルドステロン薬が奏効した糖尿病腎症の1例(I.一般演題,第85回新潟内分泌代謝同好会)
- 6 著明なインスリン抵抗性を呈したSubclinical Cushing症候群の1例(I.一般演題,第36回新潟糖尿病談話会)
- 2 対側副腎に新たな腺腫を発生した再発性クッシング症候群の1例(I.一般演題,第84回新潟内分泌代謝同好会)
- 12 急性ストレス障害を伴い診断が困難であったインスリノーマの1例(第47回下越内科集談会)
- 1 性腺機能低下症の3例(第83回新潟内分泌代謝同好会)
- 12 1型糖尿病の膵臓移植の適応について(第35回新潟糖尿病談話会)
- 9 1型糖尿病合併妊娠に,著明な下腿浮腫を伴った症例(一般演題,第34回新潟糖尿病談話会)
- 6 異なる臨床経過を呈した異所性ACTH症候群の4例(I.一般演題,第82回新潟内分泌代謝同好会)
- 1 重症肺炎を併発し治療に難渋したCushing症候群の1例(I.一般演題,第81回新潟内分泌代謝同好会)
- 3 周期性異所性ACTH産生腫瘍の1例(第46回下越内科集談会)
- 5 内科的治療に抵抗したACTH依存性クッシング症候群の一例(第45回下越内科集談会)
- 6 Urosepsisをきたした糖尿病の1例(第33回新潟糖尿病談話会)
- 5 メタボリックシンドロームと虚血性心疾患のかかわり(第630回新潟医学会,様々な領域でのメタボリックシンドロームの頻度と管理)
- 高コレステロール血症における血清アミロイドAと頚動脈硬化症に関する臨床的研究 : 慢性炎症に及ぼすスタチンの効果について